【前回の記事を読む】発達相談は「ラベルづけ」ではなく、「理解の補助線」。寄り添う言葉で満ちた小児科医が描く、“理解”から始まる支援の道。
第1章 発達の多様性を知る:特性の理解
発達障害とは何か:定義と捉え方
発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いによって、周囲の環境とかみ合いにくくなり、生活上の困難(「適応障害」とも言えます)を抱えている状態を指します。大切なのは、その「特性があること」自体が問題なのではなく、その特性がどのような状況で、どのように表れているかです。
同じ特性を持っていても、環境によって困りごとが目立たない場合もあります。つまり、発達障害とは「本人の特性」と「環境」との関わりの中で表れる困難であり、固定的なものではありません。ある文脈では「障害」として困難を感じても、別の文脈では「個性」として受け入れられることもあります。
発達障害にはいくつかのタイプがあり、以下に、主なものを紹介します。
自閉スペクトラム症(ASD):対人コミュニケーションや社会性の困難、限定された興味やこだわり、感覚の偏りなどが特徴です。アスペルガー症候群もASDに含まれます。
注意欠如・多動症(ADHD):不注意、多動性、衝動性といった特性が見られます。
限局性学習症(SLD):知的な発達に遅れはないものの、読み、書き、計算といった特定の学習能力に著しい困難がある状態です。
発達性協調運動症(DCD):体を動かすことや、手先の細かい運動(協調運動)が著しく不器用であるといった特性が見られます。
知的障害:知的な機能と、日常生活や社会生活に必要な適応能力の両方に明らかな遅れがある状態です。
本書では、小児科の日常診療で多く出会う機会があり、近年社会的な関心も高まっているASDとADHDを中心に、その特性と支援について詳しくお伝えしていきます。しかし、発達の特性はこれらの診断名にきれいに分類できるものばかりではなく、重なり合いが見られたり、グラデーションのように連続しています。