(まず理子が男の子の話するってこと自体が珍しいし……)

「それでね……私くるみにも隠してたことがあったんだけど」

「隠してたこと?」

「うん。私、実は女の子のアイドルがすごく好きでね……でも、なんか変だと思われそうで誰にも言ってなかったの」

「そうなんだ。でも、なんとなくわかってたよ」

「えっ!? なんで!?」

くるみは大学の頃を思い出した。同じ講義を受けていたときのこと。先に教室にいて勉強していた理子に声をかけようとしたが、すぐにイヤホンをしていることに気づいた。そしてその瞬間、ふと見てしまったスマホの画面に、昔かなり流行ったアイドルの名前が映っていたのだった。

「それ……変だなとか、思わなかった?」

「変? そんなことなくない? 今は女の子のアイドルが好きって子もいっぱいいると思う」

「……そう?」

「うん。今どきみんな憧れとか、可愛い女の子を見ていると癒やされるって人いっぱいいるよ。今はみんな、自分の好みを他の人にあわせるとかしてないと思う」

「好きなものは好きだって、言える方がいいのかな……?」

「いいかどうかはわからないけど、今の人はみんなそこははっきりしてるんじゃない? 良くも悪くも人は人、自分は自分、みたいな? 他人に自分のことをあれこれ干渉されたくないって思う人が増えてる気がする。お互いにそっとしておくというか」

くるみがそう言うと、理子は電話口で大きなため息をついた。おそらく安堵のため息だった。

次回更新は12月25日(木)、11時の予定です。

 

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