「ねぇ、亜紀ちゃん」
「ひゃっ!?」
いきなり長澤さんに声を掛けられて、変な声が出てしまった。
「な、何ですか?」
「亜紀ちゃんの友達で、可愛い子を紹介してくれない?」
「え?」
「最近真由がさ、妻と離婚してってうるさくて。そろそろ切り時かなって」
「……私、友達いないので、すみません」
「ははは、面白い返しだなぁ」
「どうして? どうして私を切るの!?」
バックヤードの入り口に、仁王立ちになっている真由がいた。長澤さんの話を聞いて、かなりショックを受けているように見えた。
「こんなにも正幸さんの事を好きなのに……!」
「だからだよ。もう遊びじゃなくなってる」
「良いじゃない、本気になっても! 私の事、好きって言ってくれていたじゃない!」
ああ、修羅場だ。お店で勘弁してよ……。
「真由、お店が終わったら長澤さんと話したら? ほら、今は仕事中だから」
「亜紀は黙ってて! 自分だけリア充しちゃってさ、ほんとムカつく!」
そこで真由がハッとする。私も真由の本心を知り、呆然としてしまう。
「亜紀だけ幸せになんてさせないから!」
そう言って、真由が荷物を持ってお店から出て行ってしまった。
ああ、悠希さんに話したのは、真由だ。そう確信めいたものを感じる。
ただ、どういうルートで悠希さんの連絡先を知ったのだろう?
その疑問だけが残った。