【前回の記事を読む】「ほら、こことか」と痕をなぞる社長令嬢に震えた……「嘘言わないで!」と叫ばずにいられなかった

不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~

「ああ、あのお見合い相手に? 何で? 話しても仕方ないじゃん」

……南君じゃない? じゃあ、誰が?

「どうかしたの? 悩みなら聞くよ?」

「別に何でもないよ……」

「もしかして、彼氏とまだ上手くいってないの?」

「南君には関係ない事でしょ?」

「いやいや。亜紀ちゃんを好きな俺としては重要事項だよ」

「私は仕事があるから。じゃ」

そう言って南君から離れる。

一体誰が私と南君の事を悠希さんに話したの……? この事を知ってるのって……、いや、まさかね。でも……他にいないし……。

私が思い浮かべた相手は、真由だった。彼女は私と南君との事を知っている。でも、そんな事をするメリットが真由にある? 連絡先だって知らないはず……。

「亜紀~、ランチの時間だよ~。先に行って来るね~」

手をヒラヒラさせて、真由がお店から出て行った。二十%OFFセールのPOPをバックヤードから持って来て、店頭に置いた。さぁ、『魔の一時間』の始まりだ。

相変わらずお客様が多く入り、長澤さんはレジ固定で、私は接客で慌ただしく動き回る。

十二時からのお昼の時間にセールをやるのは良い目の付け所だけど、この忙しさはいつまでたっても慣れない。

何とか一時間を乗り切り、真由が帰って来て、今度は私のランチとなった。私はお店のバックヤードでお弁当を広げるも、食が進まない。