【前回の記事を読む】突然、彼氏のお見合い相手である社長令嬢から、『貴女とお話したい事があります』と電話が来た

不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~

翌日。仕事の最中も、悠希さんの顔が浮かんでは消えるという、そこまで意識していた。

仕事が終わる時間になると、長澤さんに挨拶をしてお店を後にした。

それにしても、何で私の家? ……人に聞かれたくない話だとか? まぁ、何にしても自分の陣地に入って来てくれるんだから、言いたい事はみんな言おう。

そう強く思い、家に着くやザッと掃除をして、お茶の準備もした。

十八時丁度にインターホンが鳴り、悠希さんが訪れた。

「ごきげんよう。今日はお時間を取っていただき、ありがとうございます」

にこやかに言う姿に、ここから女の闘いが始まるのを理解していないのか、それとも余裕なのか、判断が付きかねた。

まずはお茶を淹れて、テーブルに向かい合って座る。

「私からお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

小さく咳払いをして悠希さんが言う。

「昨日、私、俊雄さんとホテルにお泊りしましたの」

「は?」

「接待のあったレストランのあるホテルで、夜景がとても綺麗でしたわ」

ここで、悠希さんが立ち上がり、服を脱ぎ始めた。

「ち、ちょっと、何してるんですか!」

「見て下さる?」

下着姿になった彼女が、頬を赤らめながら両手を広げた。

「服を着て下さい!」

「あら、これを見てもらうために、今日こちらにお邪魔しましたのに。ほら、よく見て下さる? こことか、ここ。ね?」

指さされた場所を見ると、痣があった。いや、痣というより、キスマークだ。

「俊雄さんたら、全身にキスマークをお付けになって、興奮しておりましたの」

「嘘言わないで! 俊雄さんはあなたを拒絶したはずよ!」

「ええ。最初はね。でも、私が服を脱ぐと、それはもう激しく、むしゃぶりついてきましたの。それで、とても愛されているって実感いたしましたの」

「う、嘘……」

「本当ですわ」

眩暈がした。あんなに拒絶すると言い切っていた俊雄さんが? 悠希さんの体にこんなにキスマークを? どうして? 何で? また私は裏切られたの?