【前回の記事を読む】彼氏がお見合い相手と一夜を共にしていた。だけど私も――あの日、別の男の腕の中にいた

不可解な恋 ~彼氏がお見合いをしました~

「じゃ、亜紀ちゃん、またね」

 南君はその場を去って行った。メモをもらった悠希さんは大事そうに、鞄にしまっている。

「私も今日はこれで失礼しますね」

満面の輝くような笑みを浮かべて、悠希さんも行ってしまった。

もし、もし仮に南君が悠希さん側についたら……南君と関係を持った事を彼女に話して……最終的に俊雄さんの耳に届いたら、最悪な状況になってしまう……。それだけは避けないと……!

南君の意図が分からず、もう仕事どころではなくなってしまった。

南君が悠希さんと結託したとしたら……二人はお互いにそれでメリットがある。私と俊雄さんにはデメリットでしかないけど。

「亜紀~、そっちの棚、商品が無くなってるよ~」

「あ、ごめん。バックヤードから持って来るね」

「ボーッとしちゃってどうしたの? さっき、南君来てたけど、何かあった? 謎の美女もいたし」

「まぁ、ちょっと、ね」

「何~? この真由さんが聞いてあげるよ~?」

実に楽しそうに真由が言う。

うっかり真由に話をしたら、店長に話が行って、どこまで広がるか分からない。迂闊な事はできないと思い、敢えて、別に、とだけ答えて商品を取りに行った。

丁度、店頭に持って行く商品の確認をしている時、LINEがきた。相手は俊雄さんだった。

『悠希さんが何とか諦めてくれたみたいだよ。距離置きます、って言ってきたから』

それってさっきの南君のアドバイスの通り実行したって事……だけど、めっちゃストレート……。

悠希さんの真意を俊雄さんは知らない。俊雄さんからのアプローチを待っている状態であるという事を。それを俊雄さんに伝えた方が良いのか悩む。

色々と悩んだ結果、『油断しないでね』と返信した。

俊雄さんが、もう解決していると思っているので、ガードが甘くなったら……きっとまた付け入られる。それは防がないといけない。今、彼から離れている内に、新たな手を打ちたいと思った。

俊雄さんと悠希さんが関係を持ってしまった事は、もう過ぎた事として気持ちの整理をする事にした。私も同罪なのだから。

大事なのはこれから先の未来だ。その話をしようと、今夜も会えないかとLINEを送ったら、今夜は接待だという返事が返ってきた。接待もある意味仕事と一緒なので仕方がない。今夜は話し合う事は諦めるしかないだろう。