【前回の記事を読む】食事の時、祖父だけは小さなちゃぶ台で食べ、料理も私たちと違う高級な酒の肴が添えられていた。
第一章 介護は人生の循環
再び「将軍池の由来」について
私は長く上北沢に住んできた。その同じ街に都立松沢病院があった。長く精神科専門の病院でやってきて、いつの時にいくつかの診療科が併設されたかは知らないが私自身呼吸器内科に通っていた。
私の人生のほとんどといっていい六十年を上北沢で生活しており、当時近辺の人は「キチガイ病院」(現在はキチガイという呼称さえ差別用語として禁止されていると思う)と呼んでいた。私はずっと鉄格子に閉ざされたイメージ、風評に侵されてきた。
そんなある日、園児たちの甲高い、明るい声に引き込まれるようにして将軍池公園に入り、「将軍池の由来」を読んだ。
都立松沢病院では患者さんの治療に積極的に野外作業を取り入れてきたことが知れた。その立派な池は当時患者さんたちの作業で造成され、その時の患者さんの中に自称「将軍」を名乗っている者がいて、それがこの「将軍池」の由来だった。
私はこれを読んだ時、なんてあたたかい、おおらかな病院だろうと感動したのを今でも鮮明に覚えている。
私のホームには世田谷、杉並近辺からの入居者が多い。最近入居してきたIさんは杉並に住んでいたという。