【前回の記事を読む】「小僧、その箱を渡せ。断れば屍になるぞ」——忍びの少年VSくノ一。伝説の忍びが持っていたとされる箱の中身とは…!
第一章 蓮華衆(れんげしゅう)
亜摩利は義近の投げてくる石をうるさいといわんばかりに、右手で横回転の鉄毬を盾のように前方に突き出し、投げてくるすべての石を弾き飛ばした。そして左手の縦回転の鉄毬を下方向からすくいあげるように義近の身体を狙って投げてきた。
義近は仕込み刀で鉄の爪を防いだ。
しかし防戦するのが精いっぱいで、岩場に足を取られたちまち転倒した。倒れた足元の岩を鉄毬は粉々に砕いていった。たてつづけに鉄毬が義近を襲い、情け容赦なく膝や足首そして首元を切り裂いた。
「小僧、弱きことを悔やむがいい。忍びの世界は力こそが正義よ。今度生まれ変わったら、もっと強く生まれてくることだね」
(くそ、もう駄目かもしれねぇ。この箱を守り切れずに死んじまうのか。もっと強くなりたかったなぁ。源じい、どうすりゃいいんだ……)
諦(あきら)めに支配されつつあるなか、源三郎からの最後の言葉を思い出した。
『万一、敵に追い詰められたら、背中の箱を盾(たて)にしろ』
(箱を盾にしろ? どういうことだ?)
亜摩利は両手の鉄毬を同時に投げてきた。岩をも砕く鉄毬を二つ同時に受ければ生身の人間はひとたまりもない。義近の息の根を止めるつもりだ。間違いなく義近は、死ぬ。
(ええい、もうどうにでもなれ!)
義近はくるりと後ろを向き箱を盾にした。まるで亀のように丸くなった。
ガコン!
大きな鈍い音がした。義近は恐る恐る振り返った。