5 成長意欲をかき立てる

子どもはごっこ遊びが大好きです。ままごと遊びでお母さんになりきったり、電車の車掌さんになりきったり、雰囲気や言葉遣いまでしっかり真似してくれるので、見ていて笑ってしまう時もあります。

シュタイナー教育では、このごっこ遊びが将来の生きる力につながるといいます。なりきってごっこ遊びをたくさんさせると、大人になって素敵な先輩、上司の仕事を難なく真似てマスターしてしまい、仕事が出来る人間になるということです。

この力を利用すればピアノを簡単に弾かせることが出来る場合があります。カッコよくYouTuberのように弾くと、雰囲気までしっかり真似してなりきって弾こうとするので早く上手になります。真似したいという気持ちになってくれなければなりませんが……。そのために、なりきれる発表の場としてコンサートを毎年開催しています。

普通のピアノの発表会とは違います。ピアニストになりきるごっこ遊びコンサートです。とんとん山ピアノ教室から教室へ通ってくれている生徒たちへ、ありがとうの気持ちを込めたプレゼントコンサートなので費用は全て教室持ちです。コンサートホールは出来るだけお花でいっぱいにします。お母さん方も気負わず、子どもも楽しみにしてくれています。

最近の子どもたちは情報が多様化していて、国民みんなが紅白歌合戦を見ていた私たちの時代とは違い、YouTubeなどSNSからたくさんの情報を得ています。スピーディーでカッコよくないとついてきてくれません。練習曲をぼちぼち進めていたのでは、すぐ嫌になってしまいます。

時代に合わせて練習曲もバイエルを少し、チェルニーを少し弾いてブルグミュラーを2、3曲やればソナチネ、ソナタに入ってしまいます。そうなればカッコいい曲になるので、力がついていない場合でも意欲は高まり練習に力が入ります。

ソナチネやソナタでも2、3小節ずつなら簡単な練習曲をしているのとあまり変わらないので、大人の私たちが難しい曲を弾く時にするように難しいパッセージを取り出して何度も繰り返して弾く方法で進めます。

ソナチネ、ソナタはスケールや連打もたくさん出てきます。そこでハノンやチェルニーを出して「強化練習をしてカッコよく弾けるようにしよう! 粒ぞろいの綺麗なスケールを弾こう!」などと言いながら進めることもあります。そうすれば達成感を味わえるレッスンが出来ると思います。

そして今のやり方だとついてこないと思えば、こちら側がやり方をどんどん変えていきます。今やりたいと思っているところから進めます。これはモンテッソーリ教育の敏感期の考え方です。成長したい欲を上手く使えば、生徒に負担なくレッスン出来ると思います。