【前回記事を読む】真面目な子にかぎって、いつまでたってもピアノをうまく弾けない!? 大事なのは、思考し続けることではなく、思考を手放すこと
第1章 心と身体はつながっている
2 身体の状態、頭の状態
人の潜在意識には太古からの弱肉強食、食うか食われるかという意識があり、しっかり思考を働かせ続けないと危険がいっぱいという潜在意識のせいなのか、身体に任せることが苦手です。
ゆっくり力を抜いて、大丈夫と思考に納得させる必要があります。大峰山の山岳修行をされた山伏の行者さんは「何も無いところで怪我することもあるし、危険がいっぱいのところでも怪我をしないこともある。人が一生懸命に考えても仕方ないこともいっぱいあるだろう」と言われます。
また以前、冒険遊び場の講習会で〈この場所は嫌な気持ちがする〉とか〈今日の子どもたちの様子は何かおかしい〉と感じとる力が事故を未然に防ぐことにつながると言われたことがあります。
子育て中の母親は、子どもを守るためそのようなことを感じとる力が強くなっていると思います。力を抜いて思考を止めて身体の感覚に任せた方が上手くいくこともあると思います。
3 潜在意識を黙らせる
人間は地球上に誕生した太古の昔から弱肉強食の世界で暮らしているので、食うか食われるか、やるかやられるか、という潜在意識がしみついていて、普通に暮らしていると人を批判したり、競争したりすることは自然にしてしまうそうです。
人の感覚の8割くらいがその感覚だといわれる方もいるくらい、人は簡単に批判と競争を繰り返すそうです。
その証拠に私もふと頭の中で人を評価し、悪い!とレッテルを貼ることがあります……。いかんいかん動物的本能が発動した! 気をつけないと!といましめます。
自然と評価、競争してしまう息苦しい社会になってほしくないからです。また冒険遊び場の中で、必要以上に他の子どもを追いかけている子どもを見ると私は一生懸命怒ります。絶対にその子のためにならないと思うからです。
この強烈な潜在意識に操られていたら自由な身体を手に入れることは出来ないと、私は思っています。
もちろん努力と競争を勝ち抜いてピアノを自分のものにしている人もたくさんおられます。ただ、競争して努力してピアノを弾く場合でも、脱力した柔らかい身体をつくる努力をしているはずです。
そして柔らかい身体が出来ると自然と考え方も柔軟になり、競争を意識せずプロとしていかに見せる演奏が出来るかに意識が向けられるのだと思います。
しかしそこに至るまでの間にピアノをやめてしまう子も少なくありません。ですから私はピアノに関する心配や不安要因を先に取り除き、はじめから柔らかい身体でピアノを弾けるようにアプローチしようとしています。
たくさんやることはありますが、まず心配や不安なくピアノに向き合うことが出来るような雰囲気づくりを心がけています。潜在意識に振り回されないようにすることは、ピアノを弾ける身体づくりの一つです。