【前回記事を読む】牛乳会社が"賞味期限切れ"の牛乳を、加工品の原料として再利用した。不正行為としてマスコミに叩かれたのだが…
アメリカ文学ゼミ
マスコミを心の底では憎んでいたが、しかし、再起を期す時、マスコミを使ってアピールをしなければならないため、誰もマスコミを悪く言う者はいない。
マスコミは外国資本に牛耳られていて、乳産品の輸入拡大へ導くため、日本の生産者をことあるごとに攻撃すると主張する者もいたが……。
一面的な「正義」からのみ報道するマスコミの姿勢に対して、そうではない見方もあるってことを世に知らしめること。その目的のため、私は編集者を志した。
私はそのことを出版社の面接で訴えたかったが、二次面接の担当者が醸し出す雰囲気に呑まれて、私の個人的な思いを伝えられなかった。
結果は案の定というか、不採用の通知が届いて終わった。
卒業論文は、教授が読み、その後教授との口頭試問があり、パスし、無事卒業が決まった。
「『ライ麦』には、現代社会の豊かさが生み出す〝空虚〟に抗う若者が描かれている。その幼稚さゆえの危うさ、そこから現れ出る突発的な暴力への衝動を主人公に見出す読者もいる。
大人社会が作り出した『悪』に立ち向かって果敢に挑戦する純粋で誠実な『正義』には、単純で未熟なひ弱さがつきまとう。それには誤解されやすい性質があるが、そこにこの作品の特筆すべき魅力が潜んでいる」
卒論の口頭試問で、私は教授から、少年の「正義」の危うさについて聞かれた。ジョン・レノンが暗殺された後だったが、私は十分な認識がなかった。