Part1 料理の世界における電子レンジの役割
長い歴史の中でさまざまな料理法が出現しました。どんな料理法があるのか、ふりかえってみましょう。
伝統的な料理法と電子レンジ加熱法の違いを理解した上で、料理の世界で電子レンジの果たす役割について考えてみましょう。
Chapter1 料理のはじまり
「火」の使用とともに、料理がはじまりました。火は灯りをとったり、獣から身を守るためにも役立ちましたが、加熱することによって獲物の保存性が高まり、食品の消化も良くなりました。
ゆでてアクを抜けば、食べられるようになった食材も少なくなかったでしょう。石を並べるだけで熱源をつくることができて、道具を使わなくても加熱ができる「焼く」操作は、最初に行われた加熱操作法と言えるでしょう。
縄文式土器は耐熱性、耐水性をもつ世界最古の土器とされ、ゆでてアク抜きしなければ食べられないワラビやドングリなどの山野草を縄文人が食用にしていたところから、「ゆでる」操作も行われていたと考えられます。
また、竪穴住居の中から底に穴があいたこしきが出土したところから、「蒸す」作業も行われていたと考えられます。
時代が進むと、加熱方法が変化し、料理法も増えました。縄文時代には住居の中央に火を燃やす炉がつくられ、暖房と調理用に使われていましたが、臭いや煙を居室から遠ざけるため、住居の片すみの土間にかまどがもうけられ炊事が行われるようになりました。
一方で、母屋(おもや)の床の上に炉いろりがつくられ、いろり端につるした鍋で煮炊きをしたり、餅や魚を焼く作業も行われていました。いろりを囲んで暖をとったり、食事をする楽しみもあったことでしょう。
江戸時代に登場したもうひとつの熱源に、七輪(しちりん)があります。軽量で持ち運びやすく、木炭の使用量も少なく、おいしい焼き魚ができる加熱器として広く普及しました。