しかし、母が亡くなったあと、果たして母の介護はこれでよかったのか? という葛藤が続き、長い間、反芻(はんすう)し、書きためていた介護日記や、二百時間におよぶ録音記録をパソコンにまとめ始めました。
たとえ自分が行なった介護が反面教師となってもいい。いま介護をしている人たちに役立てていただけたら、母の人生が意義のあるものになるのではないかと考えるようになったのです。一方、父に関しては満足のいく介護ができたと思えるので、参考になるところがあれば取り入れてほしいと思っています。
この本には、閉ざされた家の中で起こる介護の現実があります。介護をする上で欠かせないケアマネージャー、デイサービス、ヘルパー、訪問看護、在宅医、ショートステイの利用の仕方。介護サービスをフルに活用する方法。順に読み進めていくと、そういったことを理解していただけるように書いてあります。
理想でも美談でもありません。泣きたくなるような夜も、自分がしでかしてしまった過ちも、全部ありのままに記しました。親子とは何か、介護とは何か、人間の限界と、かすかな救い──この本には、そのすべてが詰まっています。「介護」とは、誰のものなのか? 「家族」とは、何をもって家族と言えるのか? そして、「生きる」とは、どういうことなのか?
この物語は、私と家族の小さな記録です。けれど、ここに書かれていることは、誰の身にも起こりうる現実です。もし同じようなことが起こったら、あなたはどうされますか?