ネイビーが元同僚の大学教授に、ヘベロフカを注いだショットグラスを滑らせる。
「セイちゃん、元気か?」
「ワイは元気か? ふつうや。相変わらず学生には人気ないわ」
ひと口飲んで、オッチャンはグラスの中身に目をやる。
「なんやこれ、新種の養命酒?」
「チェコの薬草酒だよ。あんたが飲んだら、200年は生きるだろう」
オッチャンは、ショットの酒を一気に飲み干す。
「もう一杯、大盛でちょうだい」……オッチャン、長生き狙っているのか。
関西弁の男が突然現れ、たじろいでいた最上さんが、後ろから話しかけた。
「あのう。ひょっとして日本創生大学の清野先生でいらっしゃいますか? わたくし、ゴールド&レイノのサイジョウと申します。わたくしのクライアントが、先生の経営者向けセミナーにうかがい、衝撃を受けておりました。わたくしもいつか、ご高説を賜りたいと存じます」
オッチャンは最上さんのほうに上体をひねり、両手で名刺を受け取ると、うつむきながらじっくり眺め、しばらく口をつぐんだ。そして顔を上げると、一変。
牧師さんのように姿勢を正し、最上さんにやさしく語りかけた。
次回更新は11月19日(水)、11時の予定です。
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