「恋愛とは繁殖期における錯覚である」と私ははばからず公言している。主に家庭内で。だいたい、夫は私の話を聞いていないので、一人娘がほんとうに一人で聞いている。「彼氏欲しいなあ」と娘が言ったのでそう助言したのだ。

「私は理想、高いの。頭のいい人でなくちゃいやなの。錯覚なんてしない」

ほう。だからこその母からの助言であると私は更に語気を強めた。理想の高いことはいいことだ、ガンガン行け、君は錯覚なんてしないと言うがそうではない。この世に頭の良い男は星の数ほどいる。ごめん、彼女いるんだ、と言われてもめげずに端から声をかけてゆけ。錯覚しないというなら、見極めろ、頑張れ、射止めるのだ。

「ママって身も蓋もない、夢がない。なんでパパと結婚したの」と可愛く口を尖らせて言うではないか。ううん、と唸ったあとに「その時は良かったと思ったの」と言ったら娘は結婚なんてしたくないとその後言うようになった。申し訳ない。

閑話休題。さて工務店に入ったら男性が多い。設計、大工、職人、建材、電機メーカーの営業等々。

かの昔ならば、結婚適齢期であったので自然とお誘いがあった。そうして「その時はもう最高」と思う男性と結婚した。私は三人姉妹の長女で実家住まいだったので後がつかえている。大学を出たと思ったら、両親は就職をしろ、就職をしたら、結婚の話はないのか、昔ならクリスマスケーキに例えられたのだ、女性は、等々責め立てる。

妹たちは妹たちで、人の化粧品等を勝手に使い、私の化粧にダメ出しをし、喧嘩をすれば「このババア」と言われる。ミニスカートをはく奪され、「もう年だからこれ着ないでしょ」と言われたのには腹が立ったが「ものわかりのよい姉」として譲った。賞賛されてもよいと思う。

24、25歳からババアと言われていつやむんだと思ったがこの先やむことはないらしい。愕然とするこの頃だ。

 

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