医学も経営学もともに学問であり複雑な現実の現象から単純な示唆(implication)を得る作業です。

学会や研究会の発表の際の結論の項目でしばしば認めるのですが、いろいろとデータを検討した結果、最終の結語で「結局一症例ずつ工夫して診療すべきです」といったような結論では、複雑な現象を複雑に解釈しただけであり、学問とは呼べないと考えます。

複雑な現象を複雑に解析し、シンプルな結論を得て、示唆をメッセージとして送ることが重要です。英語ではKeep it simple, stupid(KISS)と言われます。

また優れた暗黙知を持っているならそれは誰もが模倣できる形式知に作りあげていくことが必要です。

医師は常に医療職全体のリーダーであり、たとえ部長や院長といった管理者でなくてもリーダーシップを発揮すべき立場にあります。

しかし、医学部の教育では経営学やマネジメントに関する教育を受ける機会は与えられませんでしたし、臨床医の多くがプレイングマネジャーであり、マネジメントのみに徹することができないのが現状です。

また病院においては臨床医として周囲から尊敬されているプレイヤーが管理者の立場に就くことが一般的で、マネジメント力がないのも仕方のないことかもしれません。

しかし臨床医学も経営学も、研究対象は人であり、最終的には「人間とは何か?」を考え、人間の幸福を追求する学問と言えます。