まさ子はそう言いたいのをグッと抑えた。眉間にシワを寄せたまま黙っている母親の様子を見て、坂本は言葉をかける。

「確かにリカバリー室は落ち着きませんよね。今日の手術が終わったら、もちろんリカバリー室には行きますが、麻酔が抜けて、ある程度体調が安定したら、入院棟にすぐ移れるようにベッドを準備しておきましょう。六人部屋ならお母さんが寝泊まりするための簡易ベッドも入れられるし。もちろん完全看護ですが、お気持ち的にまだご心配でしょうから」

そう言うが早いか、坂本はナースステーションに電話をして、入院ベッドの空きを確認し
た。

「大丈夫。ベッドを確保しました」

「ありがとうございます!」

まさ子は何度もお辞儀をしながら涙ぐんだ。

(少なくとも、このドクターは、私の気持ちを汲んでくれる。再手術も、きっとうまくいく!)

 

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