【前回の記事を読む】2019年1月15日、国内初のコロナ感染者が神奈川県で発生! 感染の拡大がなく終わった3つの幸運

第1部 コロナ初期 未知のウイルスに対し我々は戦う武器もなく、防備の支度もない中で立ち上がった

I 未知のウイルスが日本に上陸〈感染初期〉
国内初の感染者が神奈川県で発生

国がCOVID-19を2類相当の感染症と定めたのは2月13日であったことを考えると井關前院長の決断はまさに的を射たものであったといえる。

その結果、このケースにおける病棟内での感染の伝播はゼロであった。

日頃から2類感染症治療に対する研修と訓練を受けたスタッフが揃い、装備の整った施設で素早く治療が行われたことは非常に幸運であった。

幸運の三つ目は14日から国立感染症研究所でのPCR検査が可能になったことであった。第2種感染症指定医療機関であった協同病院にはいち早くその連絡が届いていた。早速検体を国立感染症研究所に送り、14日に検査結果が届けられたが、届いたPCR検査の結果は陰性であった。

その結果を受けて患者が15日に退院するという手違いが生じたが、翌日検査方法を変えてPCR検査を行ったところ、陽性となったため新型コロナウイルス感染症と診断されたのである。これを受けて16日厚労省から国内第1例目のCOVID-19患者の発生として発表された。

相模原市保健所は国立感染症研究所の助けも借りて、患者の家族とその濃厚接触者、患者の受診した診療所、病院での濃厚接触者等38人に対するPCR検査も行ったが、全員の陰性が証明されている。

ここで第2種感染症指定医療機関について解説しておくこととする。

感染症指定医療機関は第1種感染症指定医療機関と第2種感染症指定医療機関に分けられ、第1種感染症指定医療機関は県内では横浜市立市民病院1か所で2床の感染症病床を有しており、主に1類感染症患者を専門に隔離治療する病院である。

第2種感染症指定医療機関は県内に8病院あり72床の感染症病床を有しており、主に2類感染症患者を専門に治療する病院である。

2類感染症とは感染力や罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が1類感染症に次いで高い感染症で、急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群、中東呼吸器症候群、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)の五つの疾患がある。

2020年2月1日にCOVID-19が感染症法に基づく指定感染症に指定され、2月13日に2類感染症相当扱いとされた。

感染症指定医療機関は感染初期に感染者を隔離して治療し、感染の拡大を防ぐ目的で設置されており、感染症病室は陰圧室を使い、病棟への病原菌の侵入を防ぐとともに、病棟を感染患者の入院病室等を感染の可能性の高いレッドゾーン、PPEの着脱のためのスペース等を感染の可能性のあるイエローゾーンとし、それ以外の部分は感染の可能性の低いグリーンゾーンとして厳密に区別し、病棟内での感染拡大を予防するための対策が取られている。