父さんが倒れて、そのまま息を引き取った。母さんは、「私の手を煩わすことなく、行っちゃった。父さんらしいわ」と泣いていた

「男二人でか？」

「そうだ。丈おじと二人でだ」と、部屋を出ていった。

「社長、嬉しいお誘いだ。珍しいな」

「圭は、君を独り占めしたいんだろう。甘えてやってくれ。本当に君を慕っているんだ」

とても、嬉しかった。寂しさも同時に……

帰って、香子に自慢した。誇らしい。香子は喜んでいる。

男二人旅、色気は無いが、僕にとっては、愛おしい圭との旅、ワクワクしている。
当日、圭が、車で迎えに来た。

「香子おばさん、色気なしのおじさんと旅してくるね。お土産、たくさん買ってくるね。楽しみにね～」と。

「丈おじ、たくさん歩くよ。体力は大丈夫か」

「何言っているか！　体力には自信がある」

「強がり言って、ついて来いよ」

「任せておけ！　アハハハハ」

草津温泉に着いた。出発して三時間半だ。圭はずっと喋っている。

「圭、疲れただろう。運転して、喋って。忙しいな。アハハハハ」

「若いから大丈夫だ。丈おじは？」

「僕は側に乗っているだけだし、君の話を聞いて笑っているだけだから、楽しいよ」

本当に楽しかった。圭は優しい子だ。

次回更新は10月20日（月）、22時の予定です。

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