【前回の記事を読む】「離婚したって聞いたけど、今どうしているの」——高校3年生の時に告白された人に声をかけられた。私は再婚していたが…
第五章 これからも二人で
ゆったりと三週間が過ぎ、三階堂の営業に行ったら、皆が頭を抱え込んでいるようだ。明るい山中君がシュンとしている。変だな。
「どうしたんだ? 明るい営業部が暗いが、何かあった?」
「あッ、監査役! 気が付きませんでした」
「皆、頭抱えているが。大野部長、話してみて」
「監査役、実は……取引先の、スミサ建築なんですが、提案された要求が、凄いんです。現在の取引額より三分の一減で、担当が苦しんでいます。毎回担当者は、辛い思いをしているんです。辞めた社員もいました」
「どう辛いんだ」
「まず、行くと複合機の周辺の掃除、ついでに各社員の机のゴミ集め、それを持ち帰る。汚れていたら『他社に変えるぞう』と脅され、接待の強要、参加も強制され、二次会も必ず参加、私たちを、スミサの社員扱いです。凄く辛いです」
「なるほど。年間の売上高は?」
「トップテンに入ります。それで余計に困っています」
「部長も、嫌なんだな」
「はい。社員を苦しめています」
「分かった。簡単だ。契約を解除しよう。その分、新規で補えばいい。責任は僕が取る。どうだ?」
「大丈夫でしょうか? 社長は」
「大丈夫だ。社員あっての会社だ。僕から報告する。新規は僕も頑張るからな」
社員が拍手喝采。こんなに嫌だったんだ。良かった。
「早速、明後日にアポを取って。提案の回答をすると連絡して、僕と課長、担当の山中君で行く。部長は会社で待機。僕を信じて」
「オオー!」と団結だ。僕は社長室へ。