3 大学時代

盛年重ねて来たらず

一日再び晨(あした)なり難し

時に及んで當に勉励すべし

歳月は人を待たず  (陶淵明 勧学)

――父の座右の銘

大学に入学することが目標だった自分にとって、サークル活動やら早慶戦だと浮かれているうちにあっという間に一年が経ってしまった。その年の冬に学園紛争があって期末の試験が吹っ飛んだ。その代わりというか、教授から「君たちにまともな就職口はないと思い、真剣に司法試験を目指して勉強するように」と訓示を聞かされた記憶が残っている。

テレビが黄金期に向かって突き進み、多方面にわたって視聴者を引き付けていた。大橋巨泉司会の11(イレブン)PM(日本テレビ系列)は多彩な話題を振りまいていた。その中に個性的な宗教学者であり、早大名物教授の仁戸田六三郎(にえだろくさぶろう)先生のコーナーがあり、巨泉さんの差し金だろうか高級ウイスキーをたしなむ場面があった。

この先生は大学ではどんな講義をするんだろうと関心をもって文学部の教室に潜り込んだこともある。西洋哲学者に関する講義が脱線して恋愛談になって、前後は忘れたが「心得として、押してもダメなら引いてみな」というところだけ印象に残った。

また、吉川英治文学賞を受賞したOBの記念講演では、当時話題になった『まぼろしの邪馬台国』の著者宮崎康平さんが奥さん同伴で登壇された。森繁久彌さんと同級とか、興味尽きない話で大いに盛り上がった。

 

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