人間とチンパンジーの手に大きな違いがある
人間とチンパンジーの手を比較すると、図2‐1に示すように親指の違いが目立つ。
人類の手の親指は立派で太いが、チンパンジーの親指は小さくて細いのが特徴である。同図には、併せてチンパンジーと人間の足を示す。
手とは逆に、人間の足と比べて、チンパンジーの足の親指が太くて立派である。チンパンジーは樹上生活を送る上で、手はもちろん、足を使って樹木を掴むように足の進化が進んだが、人間の足は安定した歩行ができるように進化を遂げたのである。
人類は脳と手の進化により「ホモ・ファーベル」へと進んだ
樹上生活を送っていた霊長類は、樹木の複雑な枝の位置を正確に把握する優れた三次元空間認識能力を持っていた。
この能力は、最後の霊長類である人類にも引き継がれた。さらに、人類は直立二足歩行することにより素晴らしい贈り物をもらった。それは大きな脳である。
脳の容積が大きくなり重くなっても、「細くて長い形」をした人間の姿勢が、重い脳を支えることができることになったのである。
脳の可塑性
しかしながら、産まれた時にすべての臓器が完全な形で備わっているわけではない。人間は成長するにつれて人間を構成する部位が徐々に完成していく。
人類の脳もまた産まれてからも発達して大きくなる。人間の脳は学習することによって発達し、新しい知見を習得することができるようになった。
この素晴らしい脳の能力を、脳の可塑性と呼んでいる。先人たちが開発した大切な技術を、人類は学習することで受け継いでいくことが可能になった。
さらに、受け継いだ技術の上に、自分たちの世代が工夫を加えて、それらの技術をさらに進化させ、次世代の人類にバトンタッチして繋いでいった。