そうすることで原稿の文言に合わせてシーンの移り変わる違和感のない映像を作り上げられるのだ。
この尺入れが極端に苦手なアナウンサーも一定数いて、本番で絶対ずれる人なんかは、変な間ができたりインタビューの音に原稿が重なってかき消してしまったりするのだ。
字幕の発注も併せて行う。何を字幕にするのか、そのニュースの概要やキラーワード、それから音抜きをしたインタビューパートの文字起こしなどをして、作成を依頼する。
ここまでが一連の流れだ。
そしていよいよ番組本番。時間がなく本番で初めて目にした原稿をそのまま読むということも多々あった。そんな時にはまたしても私のプライドが違和感を叫ぶ。
(伝え手が内容を理解していない、そもそも目を通してもいないものを、生放送でそのまま発信することが許されていいのだろうか)と葛藤した。
本番は新人時代から一番気が楽だった。一応デスクチェックの通った原稿であるから、内容はもう疑う余地のないもののはずで、私はそれをただ間違えず音声化するだけで良い。
スタジオにはスイッチを押せばゆっくり首を振る無人カメラが二台と有人カメラが一台で、それを操るカメラマン一人と年に数回余裕がある時のみ現れる存在・フロアディレクターしかいないのだから。
急に怒声を浴びせてくる上司もいない、もっとも安全で心を侵されることのない空間だった。
次回更新は10月20日(月)、19時の予定です。
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