【前回の記事を読む】一年間にわたるダブル不倫。夫と別れ、子どもの親権も失い、不倫相手にはあることを理由に捨てられてしまう。「実は僕…」

JAPANESE的倫理観と遠い女

「友達の不倫の話を聞いているときに、気づいたんだよね。ほんとに初めて気づいたの。私にはもしかしたらできないのかもしれないって」

「不倫をですか? なんでですか?」

「なんていうか、想像しただけでも罪悪感がね。うん、あったのよ。確かに」

「え、誰に対してですか?」

「誰にっていうか、なんていうか、ばれない、絶対ばれないって設定だったとしても、やっぱり子どもと夫がよぎるっていうか。なんかやっぱり、すぐそこに子どもたちがいる。

ほら、例えば意中の彼とお出かけとかしたとして、その出先に家族連れとかいるわけじゃん。嫌でも目に入るわけじゃん。その時に、切り離して考えられるなんてどうしたって想像できない。

きっと子どもの声が聞こえてくれば自分の子どもを想うし、足にタトゥーの入った人が目に付けば、司を想うと思う」

「えー、ばれないのに? その感覚ちょっと、いやだいぶ分からないです」

私は常時連絡を取り合う男たちが何人もいて、狭い地方でそんな彼らと逢瀬を重ねているのだから、それこそ家の近所のコンビニで夫といるときにその中の一人と鉢合わせたことだってあるし、夫と行為をするベッドで、夫の出張中に日替わりで別の相手と楽しむことも普通にある。だけど心は痛まない。

それは睡眠薬や精神安定剤やらに頼って心を落ち着かせているからではないはずだ。ただ単に痛まないのだ。