【前回の記事を読む】結婚後発覚したカードローンやら何やらが、もう増えていないことを願う。額は増えていてもいいけど、せめてローン会社の数は…

JAPANESE的倫理観と遠い女

「まあでも、普通はしないんですよね。普通は。そんなこと考え出したら、キャバクラとか風俗とか、主婦にとっての推しとか⋯⋯そういうのってなんだろうとか、なんか色々考えさせられますけど。

でも結局、普通はみんなする勇気もないし、しないんです。先輩が言う通りチャンスもないから慣れてないし。世の中そもそも先輩みたいに顔も整って話も面白くてって人、まじでまじでまーじーで、いないですから」

そう言いながら私は、先輩だって、不倫したくて、勇気が出なくて、私に外注してくる、意気地なしって思ってしまう。卑怯だとさえ思えてくる。

「今のところ先輩は、不倫という行為について否定はしないけど、先輩の中で倫理観っていう規制線を張ることで、自ら防ぎにいっているってことですよね。

でもね私、先輩が不倫せずに済んでいるのって、単純に飛びぬけて魅力的な人にまだ出会えていないからって説もあると思うんです。だから高みの見物ができるという。

でももしそういう人が現れたとしてもやっぱり自分を律して、抑えて、踏みとどまれるとしたら、その一番の理由はやっぱり司さんが怖いからなのかなって。今の生活が壊れる恐怖というか」

「うーん、それもあると思う。でも厳密には違うかも。司が怖いとか、文吾を失いたくない、とかそれよりも、私は自分の生き方そのもので過去とか母とかに復讐しているの」

「壮絶だった子供時代と破天荒なお母さんに復讐しているってことですか?」

「そうそう、自分の意志で生きられるようになってからの全てが、たぶん復讐。

司を選んだことも、何があっても不倫も離婚もしないことも、子どもを誰の手も借りずに楽しそうに簡単そうに養育することも、自分の稼いだお金だけで生活して、夫の稼ぎなんて知ろうともしたことないんですっていうのも、全部復讐だね。