【前回記事を読む】帰りの遅い夫、ご飯の支度、息子の夜泣き…。家事を終え、寝不足と闘いながら仕事に取り組む毎日だったが…

第一部 社会に飛び出せ ―数奇な私の人生―

Ⅰ.突き進む「言語」の道

一人前のSTを目指した養成校での修行の日々

I先生は大御所S先生よりかなり年下で、年齢的にこれから研究者・教育者として頂点に向かう時期でもありました。

事実、その後、日本にはまだ少数だった大学医学部におけるリハビリテーション講座教授として地方の医大に栄転されただけでなく、

今では若い臨床家・研究者の「バイブル」とも評されるテキストの執筆出版など、本領域研究者のリーダー的存在として目覚ましい活躍をされました。

そして、私の研究上のアドバイザーとして常に温かく適切にご対応くださり、心から感謝しています。逆に、このような「闘い」を通じて、私の方も研究者として少しは成長できたのではないか、と思います。

I先生が私にとってどれほど重要な人物だったかは、2009年の春、神戸出張ついでにお会いしたばかりなのに、ほんの数か月しか経っていない7月に私の発症の知らせを聞くや即刻遠方の任地から飛んできて救急病院入院中の私を見舞い、転院先病院の相談にまで乗ってくださったことからもわかります。

発症の知らせが届いた時、先生は「働き過ぎと不整脈のことを知っていたので、やはりという印象があった(5)」と後日回想しておられます。

そんな先生の心配をよそに、私は神戸大学教員としてひたすら奮闘を続けていました。