関 啓子

東京都渋谷区生まれ。アメリカで生まれ育った両親のもとで自主独立的生き方を身につける。臨床歴40年の言語聴覚士(ST)・医学博士。国際基督教大学(ICU)時代に失語症と出会い、その専門家志望を決意。1976年、同大学卒業。スペイン留学・社会人経験を経て1983年、国立障害者リハビリテーションセンター聴能言語専門職員養成課程卒業。東京都神経科学総合研究所(神経研)・中村記念病院(札幌市)を経て神戸大学医学部保健学科・大学院保健学研究科教授。神経研時代、後日ライフワークとなるメロディックイントネーションセラピー(MIT)を知り、その日本語版(MIT-J)を開発。所属学会は日本高次脳機能学会特別会員、日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会(ケアコミ学会)理事。2009年7月、心原性脳塞栓症を発症。後遺症として左手足の運動麻痺・感覚障害の他、失語症・重度左(半側空間)無視等多彩な高次脳機能障害を経験。短期間で現職復帰した神戸大学を退職後の2013年、三鷹高次脳機能障害研究所を設立、所長に就任(現在相談業務のみ受付)。2020年(一社)日本メロディックイントネーションセラピー(MIT)協会を設立、同協会会長に就任。現在、MITの普及・研究を目的に活動中。その他著者詳細はWikipedia関啓子(言語聴覚士)に収録。

本書はST国家資格化以前から失語症のリハビリ専門家を目指しひたすら失語症者の生きづらさ解消に尽力してきたSTが、極めて高い致死率で知られるタイプの脳卒中に襲われたことに端を発する物語である。同時に、脳卒中発症15年後の現時点において、過去を俯瞰し思いをまとめた自伝的ST人生の総集編でもある。対象としてきた障害を自身でも経験したことにより始まった「当事者セラピスト」として新しい人生が未知の経験と密な人的交流によって拓かれ、磨かれ、苦闘の末発見した新たな境地が述べられている。ST志望当初からのあらゆる出来事がまるで予め準備されたジグソーパズルのピースのようにぴったりはまって一幅の絵を構成しているように思えたことが強力な執筆動機で、本書表紙装丁にもそれが示唆されている。本書を不安と悩みの中にいるすべての脳卒中当事者とその支援者に贈りたい。

著書:『失語症を解く 言語聴覚士が語ることばと脳の不思議』人文書院、2003
『「話せない」と言えるまで 言語聴覚士を襲った高次脳機能障害』医学書院、2013
『まさか、この私が 脳卒中からの生還』教文館、2014

掲載記事

書籍

  • 脳卒中が拓いた私の人生
    ~社会参加を目指した言語聴覚士の物語~
    関 啓子
    出版社名:幻冬舎メディアコンサルティング
    脳の損傷によって言語の理解・表出が困難になる「失語症」。
    言語聴覚士として失語症患者の支援に従事してきた著者は、脳卒中をきっかけに失語症を患う。
    専門家と患者、2つの顔を持つ“当事者セラピスト”が、40年にわたる臨床経験と15年に及ぶ当事者生活を通して発見した新しい自分とは。