「違う大規模言語モデルをベースにしたAI同士が、チェックし合えるといいのに」

「うん。シュウトくんの言うようになるかも。ただ、そこにモラルがあるかどうか、よくわからないんだ。たとえば、人種やジェンダーの差別は、もともとAIに飲み込ませたデータに偏りがあると、より強く偏向が出るらしいんです。

だから人間がフェアにやらなきゃいけないんですけど……どこの誰がフェアなのか、その判定、これからけっこう揉めるような気がします。〈フェアなひと〉って、なにをどう学ぶと、なれるんだろう?」

ネイビーが連想をひろげる。

「それな。アメリカ的なAIと、中国的なAIとか。また人間の代理で揉めはじめるのかね?」

「ああ、ナントカ主義のバトルは、ボクはちょっと、面倒くさいです」

ジョージが改めて、自分が生まれた地へと思いを馳せる。イデオロギーをもとに、しあわせな場所ができたことなんて、一度もないよ。それ、歴史の真実でしょう?

「いま世界の中で比べれば、日本は、少しはマシなほうかと思いますけど……」

「ここはここで、ちょっとヘンな国かもしれないよ。日本という国家が好きだと言えば、あんたは右ですか。日本の里山の風景にこそ、暮らしの真髄があると言えば、ちょっと左が入っていますね、とか。

とにかくレッテルを貼って、分け隔てしたがるフシは、おれにはなんだか、違和感がある」

「どっちか、みたいな踏み絵をされるのは、おれも面倒くせえなぁ」YOさんも腕を組む。

「ねぇ、クマさん。アメリカ的な思考を学習済みの基盤モデルと、中国的なモデルと、イスラム的なものと、日本的なものとか、いつかコネクトすると思う?」と、シュウトくん。

「……そのAIは、発狂するかも」クマくんは、いつものブラックなジャブで返す。

次回更新は10月15日(水)、11時の予定です。

 

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