おじさんのこと教えて

1年生の子は、おじちゃん、あそんで、とジャンピングだっこしてくる。そしてだんだんと、大人になろうと、ジャンピングだっこしてこなくなる。

はにかみながら、自分の甘えに気づき、反発しながら、大人になろうと成長していく姿を見ると、なんともいじらしい。

それを見てほほえみながら、若くいられる。からだはついていかないけれど、ついつい、心の歳つきが、6歳になってしまう……。

「60歳をすぎたら、ちょっと区切りをつけて、1からかぞえ直して生きてみると、とても得するよ~」、と聞いたことがある……。

その通りやってみたら、なんと、新しいことをたくさん、からだで学べたんだ! こんな喜びはないなあ。

子どもたちと、その年代の気持ちになって、一緒にいることがとても楽しい。

でも、おじさんも子どもたちとともに、先生から、「静かに話を聞きなさい」と注意されると、一緒に静かにしてしまうんだ。

岳斗「へー おじさん、中身は若いんだ」。

「そう、ありがたいことだよ。“一緒に汗を流したい”と思っているんだよ。1年生相手のときは6歳、3年生のときは8歳だ……。なっ、おじさんと話していると、子どもと話しているみたいになってくるだろう……」。

「ほいっほいっほいっ」。

岳斗「おじさんは、いたずらしても怒らない。空気みたいだし、マブダチだよ」。

「ありがとう。うれしいな……」。

岳斗「そろそろ自然豊かなナンシン共和国へ、一緒にいこうよ」。

「そうだね。でも、ここからは岳斗くん、一人のほうがいいな。見守っているから……」。

岳斗「あれ~! 言葉にならない言葉を、まとめてくれないの。大人たちの都合でなりたっている国のことを、とても言葉では説明できない」。

タプタプタプ

「わかってよ!」と、いつか触ってみたい……と思っていた、おじさんの下顎のたるみを揺るがしてみた。

おじさんは、ニコニコしながら、アゴを突き出しているだけ。

岳斗「しょうがないな……」。

……ここから物語の始まり……


(2)鹿を追うもの山をみず…… 利益を得ることに熱中しているものは、ほかを顧みなくなる

(3)鹿をさして馬となす…… 人を威圧して、間違いを押し通す。人を騙して陥れる

 

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