【前回の記事を読む】1983年6月23日、JFK空港に降り立ったボクのポケットには、全財産5千ドルの現金しかなかった。最初に訪ねたところは…
憧れのニューヨーク

1983年6月23日、Narita Airport to JFK Airport
ニューヨークの生活は刺激的で楽しかった。しかしスポーツカメラマンの仕事が順調になるにつれ、スーツケースとカメラバッグを担いだ旅から旅の生活になり、年間35週はホテル住まいということもあった。ボクは意を決してニューヨークを離れフロリダに引っ越すことにした。
しかしいつも思い出すのはあのサッポロラーメンのあるビルの2階の狭いアパートだった。数年前に久しぶりにニューヨークを訪れ、ラーメン屋に立ち寄った。メニューも店内の内装も昔とほとんど同じだった。
そして驚いたのはあの頃働いていた日本人のウエーターが今も働いていたことである。今では出世してマネージャーだという。すっかり年寄りジジィになっていたが(自分も同じ)、「らっしゃーい」と聞き覚えのある愛嬌たっぷりの呼び声は変わらなかった。
そこには、若い頃ここのカウンターでラーメンをすすった、35年前の貧しかった自分の姿が重なった。