この忍び鎌のような鉄毬は恐ろしく手元で伸びる。義近の間合いまでおよそ五間(九メートル)ほどあったが、義近の被っていた斑蓋を切り裂き、吹き飛ばした。
(うわっ、速い、速すぎる!)
義近は思わずのけぞった。これほど速い技を見るのは初めてであった。蓮華衆の訓練でも、これほどの速さを身につけている忍びの者は一人もいなかった。
間髪入れず次の手が迫ってきた。
左手からの縦回転の鉄毬は、義近の脇腹を鋭く切り裂いた。
「痛てっーー!」
思わず脇腹を押さえたが、鮮血が噴き出した。
とにかく後ろに下がり間合いを引き離し、石を拾うだけ拾った。義近の唯一の得意技は投石だけだった。得意技というよりも石で魚を獲ることが日課でもあり、趣味と実益を兼ねていたからに他ならない。
義近はなんとか投石で反撃を試みた。しかしすでに見切られ、すべて弾き返された。
(よし、今度は変化する石だぞ。これはたまにしか出せねえんだが、やってみるか)
平たい石を何個も横や下の岩に投げつけた。すると石は跳ね返り、二弾飛び、三段跳びし、亜摩利めがけて飛んでいった。多方向から飛んでくる石に、さすがの亜摩利も後ろに下がりながら防御せざるを得なかった。
「小僧のくせに舐(な)めた真似を! 石だけであたいと互角にやりあおうとは生意気だ。だがもう石の動きは見切ったわ。遊びはおしまいぞ!」
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