【前回の記事を読む】【ミステリー】『大阪・箕面』『死体遺棄』いつものようにPCで動画を見ようとしたら検索画面のトップページに表示されているニュースが……
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現場は、箕面の滝に至る山道の中腹だった。箕面の滝とは大阪府箕面市にある明治の森箕面国定公園内にある大滝のことで、日本の滝百選の一つにも選ばれている。
滝を見るには約二.八キロメートルの山道を登っていかなければならないが、途中には食事処や旅館がある上に、秋にはモミジが真っ赤に紅葉して絶好の景勝地となるので、その時季になると家族連れやカップルで山道は溢れかえる。
現に中岡が舞子と付き合い始めた頃、二人は紅葉を観に箕面の滝を訪れた。その途中にある食事処が川床になっていたので、二人は川のせせらぎを聞きながら昼食を摂ろうと思ったが、既に予約客でいっぱいになっており、結局下山してから何の変哲もないレストランに入るしかなかったのだった。
しかし、今は冬だ。箕面駅でタクシーを降りてから徒歩で現場に向かうまでの間、中岡は数人の人間とすれ違っただけだった。
ふと中岡が立ち止まって市内の方を振り返ると、空は夕焼けに染まっていた。箕面の山に生い茂る木々の林冠には山道を中心にところどころ隙間ができており、そこからは空や市内を見渡すこともできるのだ。
現場に到着すると、そこにはロープが張られており警察関係者でごった返していた。中岡は見張りの警察官に警察手帳を示してロープの内側に入った。彼は大阪府警察本部で勤務する捜査第一課の刑事なのだ。階級は警部補である。
現場では、鑑識課に所属する刑事たちが作業をしていた。中岡がきょろきょろと周りを見回していると、見慣れた顔の男が目に留まった。