【前回の記事を読む】【舞鶴市の歴史】戦争下に東西が合併した街――海軍都市と旧城下町が共存した昭和の舞鶴とは
東舞鶴 八月十二日
海軍の都
東郷ビールを今飲んでみたくなり、レジ横の冷蔵庫から一本をとり出し、これ、すぐいただけますか? とたずねると、ああ、栓抜きますよ、と会計をしながら店員さん。
口にした東郷ビールは、シャンパンのようなまろやかな味わいだった。口当たりが優しいでしょ。
はい、飲みやすいです。割引券あげてもしょうがないよね、これ代わりに、と店員さんはメモ用紙をサービスにくれた。
東郷ビールを片手に東へ、二つ目の細道を北に折れ、アーケード街を離れた。
「新舞鶴市街図」に「旅館」と記されている辺りは、公園になっていた。
北側の歩道端に小さな社がある。
ささやかに賽銭を置き、中のお地蔵さんに手をあわせた。静謐な園内のベンチに座り、東郷ビールを飲んだ。
北の港から吹きわたる涼風が、汗ばんだ体を撫ぜていく。
薄曇りの空に暮色が萌(きざ)していた。時刻はもう六時に近い。市街地をもう少しだけ歩いて、今日はこのままホテルへ向かおう。