【前回の記事を読む】戦後の農地改革で叶った母ちゃんの夢──小作農から自作農へ、大沢家では世界で一番偉い救世主であったマッカーサーへの思い
第一話 世直し大明神
鼻マッカーサー
ところが実際は、小作人から自作農家となった家であっても、マッカーサー元帥に感謝し、写真を額に納めて長押(なげし)に飾っているとか、毎日拝んでいるとかいった、崇敬の念を表している姿を見たことが無い。そして聞いたことも無い。当然、元帥の功績を讃えて銅像を建てようなんて話は起こるはずもない。
「喉元過ぎれば熱さ忘れる─」日本人はそういう人種なのだろうか……。
注 令和の時代になって、私ははじめて東京都八王子のお寺にマッカーサーの銅像があることを知った。しかし、終戦直後のケンには知るよしもない。結局、日本においては、銅像はここでしか建てられなかったということである。
世直し神社
北魚沼郡の守門村大倉、現在の魚沼市に「米国大統領世直シ神社」という石塔が祀られている。アメリカ合衆国第26代セオドア・ルーズベルト大統領(1858~1919)を顕彰して建立されたものである。同大統領は日露戦争の和戦協定に奔走し、みごとに日露講和条約の成立に力を貸し、日本・ロシア両国のみならず世界に幸福をもたらした、ということから感謝をして建立したという。
「勝った。勝った」と提灯行列をして騒いでいる一方、こうして密かに石塔を建てて感謝をしている人もいたのであった。ルーズベルト大統領は、自分がまさかはるか遠い異国の地、日本において「世直し神社」の本尊として祀られているなど、夢にも思っていないに違いない。
話によれば建立した庄屋さんは同大統領を「世直し大明神」と唱えて毎日拝んでいたという。ただし、第2次大戦が起こると急いで地中に埋め、終戦後、再び掘り出して祀ったのであった。