【前回の記事を読む】 幼い時に見た伊勢湾台風の被害。雨が止んだ次の日、父に連れられて歩くと腹がフグのようにでっかくなっている人や、片手のない人など...

第一章 こんにちは赤ちゃん

第四部 妹

車の窓から父が「ラーメン四つください」と言って受け取った。最初は、僕、次に聡。聡が受け取ろうとした時、父がどんぶりを聡の頭の上に持ってきた、すると聡の手とぶつかって、熱いつゆがパッチャー。聡の頭は、ズッショリになった。そして泣いた。

生まれてからと言うもの……。

ねている光(生まれた子は女の子で、光と言う名前)に息をふきかけたり、ゆすってみたり、まるで、ネコにマリをあたえたようなものだった。

それに、光は体が弱くて、よく夜中にひきつけを起こした。その度に、父と母は光の口にハンカチをつっこんだ。舌をかみ切るといけないから……。 そんなわけで、父と母は「こんなに体が弱くて、育つかしら」と思ったこともあるそうだが、今ではピンピンしている。

妹と僕は誕生日の月と日が同じ。僕が予定日よりおそく生まれ、妹が予定日よりも早く生まれたので、同じ日になってしまった。三月九日、サンキューの日だ。

誕生日が同じで得したことは、今のところない。損することは、誕生日のケーキの数が減ること。三人兄弟なのに、一年間に食べることのできる誕生日のケーキの合計は二個。妹と僕の二人の誕生日だからと言って、二個ケーキを出されても、いくら食べ盛りの僕たちでも、食べきれないからだ。

とは言うものの、得が全くないわけではない。誕生日で引くおみくじは、一枚買えば二人分のおみくじになる。ということは妹と僕は年中同じ運命にあるということ。うれしいような、悲しいような。