【前回の記事を読む】「お宅の聡くんを、やめさせてください」わんぱくな弟にはかみ付くクセがあった。先生が後ろを向いた時、先生のおしりに…
第二章 入園
第一部 弟のわんぱく
弟の努力はおやつだけではない。
兄が絵本を読んでいると自分のがないからしかたなく、兄の反対側から読む。だから文字がさかさまに見える。聡が初めて読んだ文字は「の」であるが、書いた時にはこれをさかさまに書いた。丁度、数字の6が左にたおれた時のような文字だ。笑ってしまった。
と書いたところで、自分が最初に読んだ文字は何かを知りたくなったので、母に今聞いた。聡ではなく、僕がと念をおしたから間ちがいない。はずかしいけどここまで書いたら正直に言うしかない。「めし」だった。笑えない。
第二部 ちこく
そんなわけで僕は、一人で幼ち園に行くことになったのだが、一人で行くのがいやなせいか、よく休んでしまった。そのために、母にモーレツにしかられた。それがいやで毎日幼ち園に行ったようなものだ。
ある日僕が、いやだ、いやだ、と言いながら母に連れられて門の所まで来ると、先生がいて無理矢理引っ張られた。母は先生にあいさつすると、帰っていった。僕はだんだん泣けてきて、ついに大泣きになってきた。
すると先生は、僕を二階の電話のある部屋に連れて行き、僕の家に電話をかけた。そして僕に代わって「お母さんに謝りなさい」と言った。僕は仕方なく、受話器をとって「母ちゃんごめん」とだけ言って切ってしまった。
大きい組(松組)になったときに、一番思い出があるのは、頭の髪の毛のちょんまげのことだ。だれかのを見て、パーマ屋の母にやってもらったのだ(女みたい)。そのうえ、おちごさんのときには、おけしょうを先生にしてもらうのがいやで、わざわざ家から母を呼び出しておけしょうしてもらった。