【前回の記事を読む】肥料に頼らず、甘くて日もちのする柿を実現! 素人が挑んだ“無肥料栽培”の真価と、その効果とは?

第一章「柿」栽培への新たな挑戦

1 柿栽培の開始

親から柿栽培を引継ぐ

せん定に関しては、出来上がった感じが自然に見えるように配慮した。枝は、主枝も亜主枝もそして側枝もできるだけ長く伸ばした。私は、木を触るのが大好きで、この時、既に多くの種類の庭木を入れていた。そして、できるだけ自然な庭を作るようにしていた。だから柿木も切り詰めたくはなかったのだ。

結果は、上々だった。収入も大幅に増え、大成功と言って良い。そして、この成果が偶然にも県知事賞受賞へと繋がっていったのである。たった一枚買った宝くじが一等賞だったようなものだ。

 

県知事賞を受賞

平成元年四十才の時、岐阜県主催で柿のコンテストが行なわれた。柿の生産量が福岡県・和歌山県・奈良県に遅れを取り四位に甘んじており、柿の本場としての地位を取りもどすためのイベントだ。この時、私はまだ柿栽培を始めて五年目であり、目の前のことに精一杯であったので、イベントなんか気にかけていられなかった。

そんな時、農協から一本の電話があった。「柿コンテストに応募してほしい」「いや、そんなつもりはない」と少し押し問答があった後、農協が「こちらで書類を作るからどうしてもお願いしたい」と折れてきたので、断りきれず了解した。

県知事賞だった。もらえるということなので嬉しいが、この地域全体の柿の様子はわからないし、肥料を少し変えただけなのにこんな結果が出るなんて、柿の栽培とはいったい何なのか。不思議で複雑な思いがした。