「都から来た皆さんより、私からの方がいい。良ければ話してみますが」英子は老剣を見る。老剣は頷いてから、馬を降りる。「私が一緒に行こう」

そう言うと、腰の剣を外した。蝶英が受け取る。

「おまえはここに残って、英子様と法広殿をお守りしろ」蝶英が頷いた。

「さあ、烏丸、行こうか」烏丸も馬を降りる。

「皆、降りろ」

英子が声を上げる。兵も皆、馬を降りる。老剣が周りをぐるりと見回している。それから、一行の後ろの方へ、先に立って歩いていく。囲んでいる兵たちの長が、後ろにいると踏んだようだ。烏丸は、勢いで交渉役として名乗りを上げたが、今になって後悔していた。

それでも、老剣の後からついていく。烏丸は何度も振り返った。残る兵は皆、二人の方を緊張して見つめているのがわかる。老剣が足を止めた。

林の陰から男が三人出てきた。いずれも剣や槍を手にしている。老剣は両手を広げて、丸腰であることを示した。

「止まれ。何処から来た。見慣れないな」

男が、声を出した。訛りがあるが、わからないというほどでもない。

「われらは、南の前野の地から来た者だ。西の都から来た者もいる」

烏丸が覚悟を決めて、前に出て答えた。更に武器を持った兵が二人を取り囲むようにしている。剣や槍も粗削りな作りで、都の物とは違う。

「前野か。知っている。都もな。聞いたことがある。遠い処(ところ)だ」

男が頷いた。都の大王の威光は、こんな辺境まで届いている。烏丸も感心した。

「それが、どうしてここに。戦仕度の兵と馬を連れて」

男は剣の柄を握り直して尋ねる。

 

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