【前回の記事を読む】「囲まれています…50人ほど」――これから山に入るという時のことだった。こちらの10の兵では戦いきれない。一体どうする!?

大王の密使

「われわれは、蝦夷の村に行く」

老剣が答えた。

「蝦夷の村」

男は驚いて、他の二人と話している。

「どの村だ」

「わからない。それを探している」

男は笑った。

そして「嘘を言うな。蝦夷の地で、当てもなく村を探すなんて」剣を抜いて、老剣に突きつけた。

「おまえたちは、先乗りだろう。後から大軍が来る」

なるほど、そういう疑いか、老剣は頷いた。

「それは違う。大軍が来るなら、途中の村からも、知らせがあったはずだ。援軍や警告の。われらは、無用の誤解を避けるために、遠回りして村を素通りしている。更に奥の蝦夷の地を目指しているだけだ」

そう言って、男の顔を見る。

「近くの村から知らせは来たか」

男に言った。男はまた、左右の者と話している。

「いや。おまえの言う通りだ。何もない。わかった。今のところは、そういうことにしておこう」

男は剣を鞘に収めた。周りの兵も武器を下げる。

「おまえたちは、こっちに来い」

男が老剣と烏丸を指さした。

「残った兵たちは、ここで留まれ。動くな。それでいいな」

老剣は頷いた。