きらきらと光る水面に映し出されたものは、少し歪(いびつ)な円形をした色鮮やかな紅色(べにいろ)と、それを囲む銀色の糸の束である。

(紅(あか)い……薔薇……)

そう推測するのならば、その周囲に少し距離を取って囲んでいるものも植物、それもつる植物の、クレチマス、マツリカ、つるバラ……。

脳裏に浮かぶ幾(いく)つかのつる植物の名と照らし合わせてみたが、どれもしっくりこないようだった。そして、

(そうだ、これは蔦(つた)の葉だ)

確信を得た玉響は先ほどとは違い何の躊躇(ためら)いもなく、しかしそれでも慎重にそっと水鏡に両手を浸した。

右へ一回、左へ一回、目的はわからずともその先を覗(のぞ)き観るためにはこのような手順を踏むのだと、反射的に身体が動くのだった。

 

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