さらに、靖国神社など主要な神社でも販売され、販売部数も多い『古事記ものがたり注4』でも「たかあまはら」と表記されている。
神社本庁は、宣命や祝詞奏上の際は「たかまのはら」ではあるが、次世代に伝える際には、「たかあまはら」でも良いということを大らかに認めておられると理解した次第である。
また、日本漫画家協会賞等を受賞している美内すずえの『アマテラス注5』や「記紀」の一般向け入門書その他注6でも「たかあまはら」または「たかあまのはら」との表記が散見される。
合気道の祖とされる植芝盛平は、『古事記と植芝盛平』の中で、高天原を「森羅万象を成り立たせている『むすびの力の働き』を示すもの」と説いて、「タ・カ・ア・マ・ハ・ラ」と読み、かつ、一音一音の意味を解いている。
「たかあまはら」の表記は、偽史とされた古史古伝や新宗教関係に少なくない。そのためか学術的世界とは、やや縁遠いものと見なされてきたように思える。
いっぽう、Wikipediaでは、「高天原」の「読み方」は、「たかまがはら、たかまのはら、たかあまはら、たかあまのはら、たかのあまはら」と幾つかあり、時期により書き換えられてきた。勿論、Wikipediaは、純粋に学問的というより、世相を反映しているとも言えるかもしれない。
ただし、Wikipedia「高天原」の中核となる次の部分、
一般的には「たかまがはら」(格助詞「が」を用いた読み方)が多く見受けられる。
ただしこの訓が広まったのは歴史的には新しい。これは「たかまのはら」の連体格の助詞「の」が、同じく連体格の助詞「が」へと転訛したものである。この「たかまがはら」は中世後期~近世にすでに使用例がみられ、江戸時代の庶民文化、すなわち読本や洒落本など戯作文学の中で広まりを経て一般化されたものと考えられる。
上代文学では「たかまのはら」もしくは「たかあまのはら」が正当な訓とされている。