たまたま飛行機でお会いした人ですと言っても、誰も信用しないだろうと顕治は思った。でも誰がなんと言おうと、自分が信じることを行動に移すことにためらいはなかった。

ここまで生きてきたのだ、「自分が思うままに生きていくこと」これを肝に銘じていた。

とにかく絶対に遅れたりしてはいけない待ち合わせということで、顕治はゆとりを持って待ち合わせ場所に向かった。

サナさんからは、スルッセン駅改札を出た広場と指定されたが、天気が気持ちよく一駅手前のガムラスタン駅で下車して、駅前広場に向かった。確かにここが指定した場所なのに、5人の少女の銅像が見当たらない。

ゆとりを持って来たはずなのに、銅像を見つけられないで少し焦ってきた。スルッセン駅の5人の少女の銅像を通行人の方に GPSマップを見せながら質問した。

親切に応えようとしてくれたが、みなさん首をかしげるばかり。他の出口がないかと周辺をぐるりと歩き回った。そして5人の少女の銅像は、この先の階段を上ったところにあるはずだと確信を持って教えてくれた交通整理の女性の言葉を信じて、そこに向かった。

なんと顕治が到着したスルッセン駅前に出た。そして目線をちょっと下に向けると、そこに5人の少女が手を繋いでいる銅像があった!

細くて人混みで隠れてしまう銅像だった。銅像というから、顕治は勝手に見上げるような大きなモノと思い込み、それらしきものを探していたのだ。

「なーんだ。これが5人の少女の銅像か。楽しそうに手を繋いで遊んでいる銅像だ」とほっと癒やされる銅像を見て顕治は笑みを浮かべていた。

 

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