【前回記事を読む】飛行機で隣だった若い女性に「遊びの名刺」を渡した。私みたいな高齢者にも親しみを感じてくれたことが嬉しかった。
2 スウェーデン・ストックホルム
アーランダ空港から最初の滞在先であるサイモン家に向かった。
4つの荷物スーツケース、バックパック、ウエストポーチ、ギターを持って、特急列車アーランダエクスプレスでストックホルム中央駅へ移動、さらに雨の中、中央駅から地下鉄でグールマースプラン駅、そこから160番のバスでヴァッテルスヴァーゲン停留所へと、サイモンからの事前の案内通りに歩を進めた。
雨も結構激しく降り、タクシーを使えば楽だけれど、ここは頑張れるだけ頑張った。顕治は苦労しながらも目的地を目指すのを楽しんでいた。マラソンで身につけた気力と体力、フルマラソン(42.195キロメートル)よりウルトラマラソン(100キロメートル)、キツければキツいほど達成感があるということか。しかしハラハラドキドキの行動だった。
コロナが気になったが電車、バス、地下鉄もマスクをしている人はいなかった。
やっとバス停ヴァッテルスヴァーゲンで下車しGPSマップ頼りに進むが、サイモンの家は集合住宅の一室だ。GPSマップでその家を特定できても、その一室を探せるか。
サイモンからアーランダ空港到着以来「お手伝いできることがございましたら、お気軽にお申し付けください」との連絡が入っていた。これだけでも安心だ。こちらの不安状況をよくわかってくれている。
顕治は大きな屋根の4階建ての家の前に立った。日本でいえば集合住宅といったところだけれど、そのイメージとはちょっと違う。
まずはその玄関を開けなければならない。事前に教えてもらっているコードナンバー4桁を押した。開いた! そして1階とあるからその6つある表札を見ると、あれぇない! あっそうか、こちらでは0階1階、とあるから日本の2階に当たる。そして階段を上がってすぐの玄関の表札を見た。あったあった! 玄関のブザーを押した!
サイモンがにこやかな顔で「Welcome Kenji!」と握手を求めてきた。
やったぁ! 無事にストックホルムでの宿泊場所に到着した! サイモンの家の一室が顕治の宿泊場所だった。すなわち、サイモンとの共同生活ということだ。
背の低い顕治はサイモンを見上げるようにしていた。サイモンは優しい笑顔と褐色の口ひげがよく似合った人だった。間近に見る人類(ホモ・サピエンス)の仲間の一人だと思うと、気が楽になる。言葉は通じなくても通じるモノがある。