楽しくて仕方がないという笑顔なのだが、頬が細くこけているので縦に太い皺が入り、三日月型の目と目の間が間抜けた広がりを呈している。決して美男の顔ではない。

手いっぱいの戦利品を、おなかを合わせるようにして受け取りながら、あさみはなんだか特別な理由もなく気持ちが沈んでいくのを感じた。

未来の夫となる人に対して、漠然とした、しかし底知れないだるさ、覚えたての英語で言えば〝ダルネス〟を感じている。

並んで椅子に腰かけながら、心の中が、カラカラ、と音がするほど空虚な感じになってくるのを、どうすることもできない。この先何十年とこの人と一緒に過ごすのだと、改めて考えてみる。たちまちやり切れなさに襲われた。

いつまでたっても魅力を感じさせてくれない男。反対に、何年たっても魅力のあせない男。

手遅れにならないうちに、後悔しないように、あさみは頭の中をもう一度ゼロにして、最初から考え直す必要があるのではないかと思った。確実に手に入る、平凡な幸せへの道。

一方、めくるめく喜びか失意のどん底か、その賭けをすることになる道。この二つの道のうち、どちらを選ぶべきか。簡単に答えは出ない。

ともかく越前の話を聞くだけ聞いてみよう、話も聞かないうちに、てっきり求婚ではないかと早合点するのは、ひどい自惚(うぬぼ)れではないか、と自分を笑った。

そして次のことには目をつぶり、はっきり意識にのせて考えようとはしなかった。すなわち、結婚の約束を交わした身だというのに、まだ迷いがあるということ。

そして越前が何を話し出すのか、たぶんわかっているということ。それを聞けば逃(のが)れられなくなる自分だと承知していること。彼の話を聞くこと自体が、すでに道を選んだことになるのだということ……。