あの仕事ができる人間は、全人類の一パーセントにも満たないのではないかと割と本気で考えている。

今私はフリーランスとして生きている。七つ年下の精神・肉体両面において若すぎるパートナーがいて、私たちは誰よりも刹那的に日々を生きている。

生きるため、遊ぶため、そうして自分たちを生かすために働いている。死ぬ気で仕事を調整して空けたその隙間で、未踏の国を巡るのが生き甲斐だ。

才能に溢れる私はどんな職場でも、どんな旅先でも、意図せず信者を獲得してしまう。前職では偽善者っぽくて苦手だった先輩も、当時から私の信者の一人だった。

いつからか私も謎に満ちた先輩の虜になっていて、私たちはソウルメイトになっていった。

先輩にしか言えないことが今では多くあるし、私にとっては同姓で唯一、いなくなったら生きていけない存在なのかもしれない。

約束していた店に着くと、いつもの席に先輩はいた。いつ見ても、後ろ姿はまるで中学生のように無造作で、何度見ても少し笑えて、荒んだ心を最初に安心させてくれる。

先輩は髪を染めないし、ネイルもしない。だけど対照的な私のことはいつも褒めてくれるし、その様はただのお世辞というよりかは羨んでいるようにさえ見える。

それでいて先輩は、洋服は仕事用か休日用かのほぼ二択で、ミニマリストでもないはずなのに装飾物も一切つけず、徹底的に無駄がない。

それでも元アナウンサーというだけあって、存在感が目を引く。手を加えないからこそかもしれないが、さすがだ。