「いや、今回からセはなかったんですよ。さすがにこれで」
そう言って米ちゃんはコーヒーを飲みながら、同じくコーヒーを飲む私に向かってスマホの画面を向けた。
画面には真っ赤に染まった生理用ナプキンが大きく写っていて、私は(ああこういうところは少し好きになれないな)と感じてしまった。
だがすぐに笑って「あー、ね。できなかったのね」と返した。
「でも久々の律はやっぱり良かったんですよ。一緒に映画を観て、感想を話して、それから仕事の話とかして。あ、あと今の彼女に結婚を迫られているって言っていました。惨めですよね、彼女ももう来年三十らしくって、結婚を迫っているらしいんです」
「そっか。結婚かあ。で、米ちゃんはどうなの? 夫婦生活の方は?」
「あー、死にたいっす。死にたい。はははははは」
麻痺する女
ぎりぎり二十代。地方生まれ、地方育ちの地方暮らし。東京が嫌い。仕事で各地を飛び回り、年に数回は海外旅行に行く。結婚・離婚歴ともに一回。子はなし。事実婚の夫がいる。事実婚をカウントするなら、前言撤回、結婚歴は二回となる。
私が、目の前の誰かに対して、それが男でも女でもいいから、分かり合えるかどうか、分かり合おうとするに値する人間であるかを判断するためにいつも考えることがある。
それは「あなたに記者ができますか」ということだ。
次回更新は8月11日(月)、19時の予定です。