一度はその言葉通り、見違えるほどに美しくなった彼女だったが、やはり三十歳を目前にして肉付きも変わってきたのだろう。
フェイスラインも少し緩やかになった気がする。
「私たちが会うと律から連絡が来るってジンクス、ほんとなんですよ」
椅子に座るやいなや放った一言目はそれだった。
「いやあ、先輩に会うと絶対来るんですよね、連絡。ほんと、ありがとうございますっ!」
手を合わせるようなジェスチャーで喜びを表現しているつもりなんだろう。パートナーがいながらもここまで奔放に恋を楽しめる米ちゃんは羨ましいほど美しい。今この瞬間を生きることに苦労している人間だとはとても思えない。
米ちゃんは事実婚のパートナーを持ちながらも、別軸で恋心を抱く律という存在がいる。彼女によると、その律氏に会いたいと願いながら私に会うと、その日の夜必ず連絡が来るのだという。
だから彼女はよく、彼に会えない日々に我慢の限界がきそうな頃を見計らって、私に連絡をくれる。
「で、今回はからセ? ことセ? どっちをしたの?」
これは私が彼女にいつもする質問だ。からセ・ことセという言葉は、米ちゃんが作ったもので、米ちゃん界隈の人間にしか通じない。
「からセ」は身体のセックスで、「ことセ」は言葉のセックス。どちらがより崇高で、どちらがより親密なものであるのかは個人の解釈次第である。この見解について私と米ちゃんの間で意見を交わしたことはない。
ただ、いつだって米ちゃんはこの「セ」を重要視していて、男たちと日々いずれかの(いや、時に両方の)「セ」を楽しんでいるのだ。