【前回記事を読む】クレヨンやフェルトペンなどでなぐり描きを始めるのは、手の支えがなくても歩くことが可能な二足歩行を開始する1歳頃から

1. 子どもの描画の発達段階

絵を描くきっかけ

絵を描くきっかけは、子どもの周りにいる人が、絵を描いたり紙に文字を書いている姿をよく見かけたりすることが契機になります。そのような環境があれば、目の前にペンと紙があれば、それを模倣しようとして描き始めるようになります。

周囲にそうした環境がなければ、お母さんやお父さんが紙と描画材(クレヨンやフェルトペン等)を用意し、それをどう扱うのかを子どもに見せることでも描き始める契機になるでしょう。その時お父さんやお母さんが描いたとおりに描かせるのではなく、描画材と紙を子どもに与え、子どもに「やってもいいよ」や「描いてみる?」などと声をかけるだけで大丈夫です。

与える紙は、A3などの少し大きめがいいですが、A4 でも構いません。まだ見た情報をもとに手を動かす「目と手の協応動作」がスムーズに行えない時期は、握ったフェルトペンを上下に紙に打ち付けたり短線を幾つか描いたりします。また、左右に振幅線を描いたりします。

初めての体験なので、点や線と出合うと楽しそうになぐり描きを続けます。自由に描けるというのは、精神の開放においてもいいと思われます。自分の行為が親に見られ認められているという感覚は、無意識のうちに親への信頼感や安心感を得ることになります。

目と手の協応関係が成立していないときに、親がお手本を示したり言葉で誘導する行為は、子どもの表現を閉ざす行為になりますから、この時期は温かく見守ったり、時折その線に共感するのがいいですね。言葉に出さなくても、その時期にしか描けないその子らしい線に共感し温かく見守るだけでも構いません。その雰囲気が大切です。

描画材は、クレヨンやパス類(クレパス等)、フェルトペンなどもいいです。色もいつも同じ色ではなく、他の色を使うことも伝えていけば自由に色を使うようになり、色彩の趣味も出てきます。

私の娘は3歳頃、ピンクを使って描き、その色は自分の色であると話しながら描いていました。それで、「お父さんは何色」と聞くと、「茶色」と答えました。どうして私は茶色なのかと思いましたが、後で妻が娘に聞いたところ、私が大学に行くときに使っているカバンの色が「茶色」だったからということのようで、ホッとしました。