【前回の記事を読む】彼は気づけない。薄笑いをこらえた表情も、はにかみと捉えた。友達がいのない女だ。抱かれながら貧乏ゆすりするような、薄情な女。

2章 一本道と信じた誤算

「あんたに細やかな情を求めるほうが無理なのかもしれない。でも、あんたが困っているときや辛い時期に、あたしはそばに付いていてあげたでしょう?

話されたことを話されただけ聞いて、ほかに何も追及したり、責めたり、反対したり、いたずらしたり、そんなことはいっさいしなかったでしょう?

黙ってそばにいて、あんたの心中を察しながら、あたしも一緒に悩んだじゃないの。それなのに、どうして今あたしが……」

あさみは次の言葉を言いよどんだ。

「あんたは悩んでるの?」理緒子が物静かに尋ねた。

「悩んで、悩んで、悩んだ末に決心したんだわ。それを、ここへ来て理緒子が……」

「どう悩んだの?」

涙声になど理緒子はごまかされなかった。

「あんたはあいつを愛しているの?」

愛しているの?――『否』の返事しか期待していない口ぶりの問いかけ。百パーセント疑っている、冷ややかな響きのする問いかけ。

まるで山川を愛することは、利口な者なら誰もしない、価値のないことだとでも言うようだ。なぜ愛しちゃいけないの? そう返すために、あさみは顔を上げた。そして、まじめで鋭い眼差しにぶつかった。