「そう。だから、くるみのお姉さんはどうやってかわしたんだろうって。どう見たって、私が誰かの奥さんになるようなところ想像つかないだろうにさ」
理子はあっけらかんと言う。くるみはカシスピーチの最後の一口を飲んで、口を開いた。
「理子はさ、恋人とか欲しいって思ったことはないの? ずっといないよね? 私が知らないだけ?」
「ううん、ずっといない。生まれてこの方ずっと1人よ。まぁ……そりゃ恋愛映画見たらいいなぁとかは思うよ? でも私、そういうキャラは求められてないでしょ。生まれつき誰かの引き立て役なの」
「そんなことないよ?」
「いいの、客観的に物事を見つめることって大事でしょ。私は可愛い子が求められる恋愛市場では求められてないの」
昔からそうだ。理子は自分で自分の容姿を貶める。可愛くないから、とそっち方面はすべて諦めてしまっているように見える。
「親にまで『可愛く産んであげられなくてごめんね』って謝られるんだよ? そりゃ私もわきまえるよ、ここは可愛い子の出る幕で、私の出番じゃないなって。でもいいの、私には仕事があるからさ」
「……親御さんに、抗議したほうがいいよ」
「いいんだって。もう慣れてるから。それより、飲み物いる?」
「あ、うん……」
理子はもう何も感じていないらしい。『可愛さ』への未練は1ミリも感じない。でもそれで本当にいいのだろうか?
くるみは若干アルコールの回った頭で、そんなことを考えていた。